国際情報

韓国人 40%が本読まず25%大学生が「大韓民国」を漢字で書けない

 韓国は世界一の学歴社会と称されるが、そのイメージとは裏腹に“知の崩壊”が進んでいる。評論家の呉善花氏がその背景を解説する。

 *  * *
 韓国の書店には参考書を選ぶ学生の姿ばかりで、社会人の姿はほとんど見られない。韓国人は世界一読書量の少ない国民と揶揄されていて、韓国統計庁による調査では韓国人の40%以上が年間1冊も本を読まず、平均読書量は5.3冊だという。調査方法は違うが、“読書離れ”が指摘される日本人でも年間約19冊。かく言う私も初めて日本を訪れた時は、仕事と関係のない分野の本を読み、教養として歴史や文化を学ぼうとする日本人の姿勢に驚いたものだ。

 こうした現象の大きな原因の一つが「漢字廃止」である。私が中学生だった1970年の春、韓国は学校で漢字を教えることをやめた。私の世代以降は“ハングル専用世代”となり、50年近く経った今日では約8割の国民がハングルしか読めなくなってしまった。韓国のキーボードはスペースキーの横に一応今でも漢字変換キーがあるが、若い世代にはほとんど使われない。

 韓国語の語彙は漢字由来の「漢字語」が約7割を占める。それを表音文字であるハングルだけで表わすのだから、日本語を平仮名だけで書くようなものだ。自ずと同音異義語の判断に迷うことが増える。

 表意文字である漢字であれば、知らない熟語が出てきても意味が掴みやすいが、ハングルではそうはいかない。意味が分かりづらいものを簡単な言い回しに言い換えることもある(日本語で譬えると「腐心する→もんだいをかいけつするためにがんばる」といった具合)。だからどうしても幼稚な表現になり、言い換えのできない抽象的な概念などの理解が難しくなる。

 書物に漢字語がたくさん出てくると意味不明な言葉の羅列に見えるが、ハングル専用世代はそこを読み飛ばす。残りの文脈でなんとなく理解した気になるのである。したがって本を読む気も失せ、読書量は激減するわけだ。

 さらに恐ろしいのは文化の断絶である。古典や史料がどんどん読めなくなり、大学の研究者たちでさえ1960年代に自らの指導教授が書いた論文を読むことができないのだから、問題の根はとても深い。

 折に触れて漢字の復活が議論されたが、「世界一優れた文字を守れ」と主張するハングル至上主義者たちの反対に遭い、今や教師の世代に漢字を教えられる人材がいなくなってしまった。自分たちの大統領である「朴槿惠」はおろか、過去の調査では大学生の25%が「大韓民國」を漢字で書けないとするものもあった。

 ノーベル賞受賞を逃す度に「日本は賞をカネで買った」と口汚く罵る声が上がるが、そんな暇があるのなら漢字を失うことの意味を真剣に考えるべきではないだろうか。

●呉善花(お そんふぁ)1956年、韓国・済州島生まれ1983年に来日、大東文化大学の留学生となる。その後、東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「漢字廃止」で韓国に何が起きたか』(PHP研究所刊)など著書多数。

※SAPIO2013年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

’25年中に公開予定の映画の撮影に臨む北川景子
北川景子、2025年公開映画で貧困にあえぐシングルマザー役“スタッフに紛れてどこにいるかわからない”ほど、生きることに疲れた姿を怪演
女性セブン
2025箱根駅伝の注目ポイントを瀬古利彦氏が紹介
【瀬古利彦氏が予想する2025箱根駅伝の構図】優勝候補の青学・駒沢・国学院の強みとウイークポイント ダークホースは「中央大です」
週刊ポスト
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
《女性に解決金9000万円》中居正広を支えていた薬指に指輪の“10年愛”パートナー…トラブル前後で打ち明けた「お酒を飲まないと女の子と話せない」状態
NEWSポストセブン
元モノマネ芸人でクリエイターのおかもとまりさん
【元夫とは「パートナーシップ」継続中】おかもとまりが「業界関係の年下新恋人」について激白「息子も『早く付き合えば?』と応援してくれました」
NEWSポストセブン
大谷翔平(左)の目標とする二刀流はいつ復活するのか(右は真美子夫人)
真美子夫人も心配する「大谷翔平の左肩」の容態 整形外科医が回復への見通しを解説「本格的な投球再開まで2~3か月かかるのでは」
週刊ポスト
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
《9000万円重大トラブル・中居正広》フジ幹部A氏との蜜月「オレが信長ならAは秀吉」 酒の場で「2人が興じたゲーム」
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
《不倫だけど真剣交際》二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が白いノースリーブ美女と広島旅行「申し訳ない」お相手・A子さんに引け目か
NEWSポストセブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広、芸能界の親友である松本人志(右・時事通信フォト)
《女性とトラブルで解決金9000万円》中居正広が「芸能界の親友」松本人志に助言していた「『性の抑制』が自分でできたら……」
NEWSポストセブン
『極悪女王』の撮影秘話なども語った
【『極悪女王』で絶賛の嵐】剛力彩芽(32)が明かす「高すぎるドロップキック」の秘密 「3キロの壁がある」「体重計にはのらない」驚きの肉体改造
週刊ポスト
折田楓氏(本人のinstagramより)
《地元雑貨店が悲鳴》兵庫県知事選のPR会社・折田楓社長、沈黙貫くなかプロデュースグッズに思わぬ影響「クレームの電話もよくあって…」
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子
《恋情ドライブデート》中村芝翫「愛人との関係が切れない…」三田寛子が待つ自宅との“二重生活”、愛車は別れを惜しむようにベイサイドを周回
NEWSポストセブン
セクシー女優への転身を発表した瀬戸環奈さん
【セクシー女優転身】1000年に一人の逸材・瀬戸環奈に60分独占インタビュー「水着と裸は布1枚あるかないかの違いでしかない」
NEWSポストセブン